ホーム > 投資コラム > イー・トレード(E*TRADE)社事業の補足説明(2)
前回の続きとして、「銀行型のバランス・シートを活用しての利益獲得」についても、米E*TRADEを例に取ると、
同社2006年度の決算書では、同社が金利収入を得るための企業活動として、約454億ドル(約5兆2,182億円)の「運用」を行っている旨が示されています。
但し、この巨額の資金の多くは同社の自己資本ではなく、むしろその大部分は、約428億ドル(約4兆9,230億円)にも上る負債であり、中でも最も大きな割合を占めているのが、
約204億ドルに達する個人顧客からの預け金です。
つまり、自己資本(同社の場合、約42億ドル)の10倍を超える額の、個人顧客の預け金を始めとした負債を低コストで借り入れ、それらをより高いリターンを得るべく運用に回しその利鞘を稼ぐ、という姿が、上記「銀行型のバランス・シートを活用しての利益獲得」の説明と
なります。
具体的な利ザヤの状況としては、同社のケースでは、負債に掛かる金利負担が3.16%、運用資産の生み出す金利収入が6.01%となっており、利ザヤとしてその差の2.85%を得ている、という構図になっています。
(事業地域、業態のバランス等の違いが存在するため単純な比較には適しませんが、国内のみずほフィナンシャルグループの2007年3月期における調達利回りは1.2%、運用利回りは2.08%となっています。)
E*TRADE社の金額ベースでは、運用資産の生み出す金利収入が、
約454億ドル × 6.01% = 27.26億ドル(約3,135億円)
負債に掛かる金利負担が、
約428億ドル × 3.16% = 13.52億ドル(約1,555億円)
差し引き、
27.26億ドル − 13.52億ドル = 13.74億ドル(約1,580億円)
がバランス・シートを活用して獲得された利益、となっており、これを前回のフィー収入
4.79億ドル(約551億円)と比較しても、E*TRADE社における、バランス・シートを活用しての調達・運用業務の重要性を見ることができます。
その一方で、前回ご説明申し上げたように、一度システム費用などの固定費を上回る収入を上げる体制を築くことが出来れば、余程大きな顧客動向の変化でも起こらないか
ぎり、黒字基調は崩れにくいフィー収入ベースの事業に対し、
こちらのバランス・シートを活用しての調達・運用業務は、その運用にあたって多額のリスク資産を抱え、更に自己資本を大きく上回る金額の負債を抱えての「レバレッジの利いた」ビジネスとなるため、一度重要な投資判断の誤りなどが起こると、同社の業績、財務体質に非常に大きなダメージを与える可能性を抱えることとなります。
実際に、昨今の米国サブプライム・ローン問題に端を発する株価下落局面で、同社の株価が競合のチャールズ・シュワブ、TDアメリトレードよりも大きな下落を示すこととなったのは、同社の運用資金の多くが、不動産関連の投資資産(ホーム・エクイティ・ローン、MBSなど)に回されてきており、ここから生じる可能性のある運用に伴った損失の大きさが
懸念されているという背景があると見られています。
但し、それはあくまで運用のリスク管理に問題があった場合の下方リスクであり、近年の米国での金利上昇局面では、イー・トレード社のみならず、同業のチャールズ・シュワブ、TDアメリトレードにおいても、金利上昇に伴う利ザヤ拡大の恩恵で著しく業績拡大が続いてきたのも事実でありますので、
翻って低金利が続く日本におけるオンライン証券の今後を見通した場合には、この「バランスシートのより一層の効率的活用」と「金利上昇に伴う利ザヤ拡大の恩恵」が掛け算で効いてきた際には、現在の株式市場の期待以上の収益インパクトが起こる可能性もあると、現状弊社では見ています。
以上、フィー収入部分とバランス・シートを用いた調達・運用の各事業の解説を2回にわたり試みて参りました。
少しでも理解のお役に立つ部分がございましたら幸いです。
(*文中の円換算は1ドル=115円として計算しています)
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