ホーム > 投資コラム > 「為替レートの変動と(株式)投資(1)」
当コラムでは、その一部の内容として、海外の個別銘柄に関する記事を
積極的に取り上げておりますが、昨今の世界的な米ドル離れの流れを受け、
特に米国企業への株式投資について、ドル安(円高)の進行による
円ベースでのリターンの目減り、あるいは損失の可能性を心配されるお客様から、
この点に関する弊社の見解につき、ご質問を頂くこともございます。
現在までのところ、弊社が実際に助言をご提供しているのは国内銘柄のみですが、
・今後、米国企業を含め、海外の個別銘柄(但し、日本の証券会社で広く、
低コストで取引可能なものに限定)を助言対象としてご紹介する可能性も
高いこと
・為替リスクと外貨建て資産への投資、の関係性については一般に関心を
お持ちの方も多いと考えられること
等の理由から、これに関する弊社の見方を、今後2−3回程度にわたり整理して
ご説明してみたいと思います。
ここでは理解を容易にするため、非常に単純化した2つのモデル
(とその派生物)を比較することで、この関係性を見ていきます。
題材として取り上げるのは、変化の少ない安定した事業を手掛ける
米国企業A社の株式(米国に上場、株価は米ドル建て)への投資により、
5年後の円ベースでのリターン獲得を狙う、日本在住の投資家J氏
(所持金1万円)による投資のケースです。
(純粋に為替変動と投資リターンの関係のみを追いやすくするため、
キャピタルゲイン課税、手数料などは考慮から省いています)
(ケース1)
まず、A社の現在(08年6月末)の株価は100ドル、現在のA社の
1株当りの利益は10ドル、として、結果、同社のPERは10倍
(100ドル÷10ドル=10倍)で評価されているとの条件をおきます。
A社は、すべての事業を米国内で行っているため、1株当り利益の10ドルは
すべて米国内で稼がれた利益です。
この時、ドル円の為替レートが1ドル=100円だとすれば、
J氏は元手の1万円の投資によって、A社株を1株(100ドル)手に入れる
こととなります。
J氏による投資から5年の間、A社の経営状況等には何ら変化も起こらず、
A社業績もまったくの横ばい、結果として5年後のA社1株当り利益も
10ドルのまま、であったとします。
成長見通しも変わっていないため、株式市場によるA社に対する評価も変わらず、
PERも5年前と同じ10倍であったとすれば、A社の株価も変わらず
100ドルのまま、となります。(10ドル×10倍=100ドル)
その結果、この5年間のドルベースでのリターンはゼロ、となりますが、
ドル円の為替レートは、この5年間に大きく円高ドル安が進み、
1ドル=50円という円高局面に入っていたと仮定します。
こうなると、J氏が求めていたのは円ベースでのリターン獲得でしたが、
投資から5年後に彼がA社株を売却し、100ドルを元の通貨である円に
戻そうとした場合には、
100ドル×50円=5,000円
と、元手の1万円のわずか半額しか手元に戻ってこないこととなります。
投資期間の5年の間にA社の経営状況は何ら変化しておらず、A社の株価も
ドル建てでは1セントも下落していませんが、為替市場でこの5年に急激に
円高ドル安が進んだことによる影響を100%被ることによって、
J氏の円ベースでの投資リターンはマイナスの50%となってしまいました。
これがケース1の投資結果です。
(ケース1−2)
次に、ケース1で用いた前提に、一つのプラスの条件を加え、その影響を
見てみます。
変更する条件は、A社の成長性とし、この5年間でA社は年率15%程度の
利益成長を実現した結果、A社の1株当り利益は20ドルへと増加したと
仮定します。
このケースでは、5年後の株式市場によるA社への評価も高める
(将来性への期待からPERを上げる)ことも可能ですが、前提を単純に
するため、ここでは5年後のPERも投資時点と同じ10倍に留まっていた
とします。
その結果、A社の株価は、1株当り利益20ドルに対しPERが10倍、
つまり、
20ドル×10倍=200ドル
へと上昇することとなります。ドルベースでは5年間で100%のリターンです。
一方、為替市場の動向は前のケースと変わらず、この5年間に大きく
円高ドル安が進み、1ドル=50円という円高局面に入っていたと仮定します。
そのため、J氏による投資結果は、投資から5年後に彼がA社株を売却し、
200ドルを元の通貨である円に戻そうとした場合には、
200ドル×50円=10,000円
と、元手の1万円が増えも減りもせず、そのまま手元に戻ってくることとなります。
投資期間の5年の間にA社の経営状況は大きく良化し、A社の株価も
ドル建てでは2倍となりましたが、為替市場でこの5年に急激に
円高ドル安が進んだことによる影響は、ケース1同様、100%被ることによって、
J氏の円ベースでの投資リターンは変わらずの0%となりました。
これがケース1−2の投資結果です。
ここまでの結果を見ると、仮にドルの急激な減価(円高)が進むのであれば、
米国企業A社への投資は、もしA社事業の成長がなかった場合には大変に
失望的な結果となり、仮に成長があった場合にも、急激なドルの落下が
そのプラス分を相殺してしまいメリットが無い、という、
円高と外貨建て投資の関係性について広く注意が促されることの多い内容と
なんら違いがありません。
しかし、特に米国を始めとした先進国の代表的企業の実態を見渡してみると、
上記のようなケーススタディは必ずしも
実情に即したものとは言えない場合も出てきます。
その可能性について、次回のコラムでもう少し考えを進めていきたいと思います。
(次回に続きます)
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