ホーム > 投資コラム > 「元本保証で年10%のリターンを狙う」
今回は「元本保証で年10%のリターンを狙う」と銘打ち、単純化した
架空の金融商品の作り方を見ることで、実在する類似の商品等のメリット・
デメリット、その使い方などについて考えてみたいと思います。
(以下では単純化のため、税金・手数料・多少の時間のずれは考慮に入れず
説明を行います)
まず、タイトルのとおり、「元本保証で年10%のリターンを狙う」商品を
取り上げますが、ここで、「年10%のリターンを狙う」は、「結果として
年10%のリターンを得る」という意味ではない点をご確認ください。
あくまでその可能性があると同時に、どんな失敗をしても元本額は守られる、
という商品(お金の流れの組み合わせ)を設計することが今回のテーマと
なります。
内容はとても初歩的なものですので、上記の概要を読んですぐに作り方が
思い浮かぶ読者の方であれば、これ以上読み進めて頂く必要はないと思います。
逆に、上記の概要を見て、この商品が「ノーリスク・ミドルリターン」
のように映った方は、今回の内容を参考にして頂ける部分もあるかも
しれません。
このようなお金の流れの組み合わせは、実際には無数のものが設計できる
のですが、弊社で今回用意した例はその中でも、ほとんどの読者の方に
とって容易に設計でき、かつ、商品の質としては低い(リターンとリスクの
バランスが劣る)ものです。(理解を容易にするためにそのような例を
選択しています)
無数の組み合わせが設計できる理由は、「金利」と「リスク」という2つの
キーワードを押さえさえすれば、具体的な手段は多数存在するためなのですが、
このヒントを念頭に、以下の低品質な設計例をご覧になる前に、ご自身で
一度設計方法をお考え頂くと、より理解が深まると思います。
それでは設計例です。
まず、元本全額(ここでは10万円とします)を、1年間の定期預金に
預けます。
最近の水準では、ネット銀行などのキャンペーンなどでは年1%程度の金利が
得られることがありますので、便宜上、ここでは年1%の利息、つまり1年後に
10万円 × 1% = 1,000円
の利息を手にすることが出来るとします。
(ここで、仮に金利を0.1%としても、後の条件をそれに合わせ修正する
必要が生じるだけで、議論の構成には影響は与えません)
ここで終わりとすると、リターンは年1%に留まります。
これでは年10%は得られませんので、元本の10万円は再び銀行預金に
預け直した上で、利息分の1,000円を持って、オッズが10倍を満たす
賭けをいつでも引き受けてくれる場所(例えば公営ギャンブル場)へ向かいます。
(金利が0.1%の場合はオッズ100倍の賭けを探します)
あとは結果次第で、手元の1,000円はゼロ円にも1万円にもなり、
それによって、1年間のお金の流れ(キャッシュフロー)の仕上がりは、
賭けに勝った場合には年10%のリターン、負けた場合には年0%、
しかし元本には手を付けていないので元本は保証される、という商品性を
持ったものとなります。
上記の設計例だけを見ると、あまりに低次元の発想のようでありますが、
ここで重要なことは、このような低質な設計でも当初の「元本保証で
年10%のリターンを狙う」という2つの条件に関しては、偽りなく
それらを満たしている、という点です。
現在の日本のように、世界の歴史上でも珍しい低金利の水準にあっても、
そして元本額が小さくとも、一定の時間が伴う限り、たとえ少額であれ
投資家は必ず利息を手にすることが可能です。
そして、その利息額が少額であっても、その部分に大きなリスクを負担させれば、
幸運であった場合にはという条件付にはなりますが、大きなリターンを実現することも確率的には可能です。
上記のような公営ギャンブル等の場合には、その運営費、国・地方自治体の
見込む利益の存在があるため、ペイアウト(払い出し)率が
100%を大きく下回ることとなり、それが上記設計のリスクとリターンの
バランスを低質なものにしている原因ですが、
一方ではこれらはほとんどの成人の方であれば設計可能であるため
(一部の、学生や公営ギャンブルへのアクセスが困難な方を除く)、
一般的な金融商品とは違い、作成者(金融機関など)に対するフィー
(手数料・報酬)を支払う必要はありません。
また、これを「元本保証で年10%のリターンを狙う」商品として売り出した
場合に、内容を知った上でフィー(例えば0.5%)を支払ってでも買いたいと
考える人は少ないと思われます。
この例をきっかけに投資家が再考できると思われることは、フィーを支払って
商品設計を他者(金融機関など)に委託する際には、少なくとも支払うフィーと
同額以上には、上記のような低質な設計よりもメリットがあると考えられる商品
を探す必要が当然にあり、
そのためには、「元本保証」と「○%のリターンの可能性」という魅力的な
言葉の組み合わせに飛びつくことなく、その前に必要な時間を掛けて商品設計の
中身、すなわち
「どのように元本保証を実現しているのか(上記のように元本部分には
金利を稼がせているだけなのか)」
「○%のリターンの可能性は、どの程度あると考えられるのか(これは将来に
依存するため厳密な把握は不可能でも、どのような傾向があると考えられるのかを
知るだけでも有益と思われます)」
「最も物事が良く推移した場合(上記の○%のリターンが得られる場合)
以外の時には、どの程度のリターンが期待されるのか」
「これらのキャッシュフローの構成を設計するために、どの程度のコストを
自分は負担しているのか(複雑な商品であればあるほど、このコストが
見えづらくなります)」
等についての理解と納得が大切であると思います。
そして、これらの確認のステップを確実に踏むことで、自分で出来て
コスト負担を避けたい役割と、金融機関などに任せることでコストを負担する
見返りに自身の作業量を軽減する、あるいは自身ではアクセスの難しい資源の
活用を図る、といった使い分けも可能となり、最終的にはそのことが長期的な
資産運用のリスク・リターン・コストバランスの適正化にもつながると
弊社では考えております。
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